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日本中が熱狂した二〇〇二年のサッカー・ワールドカップ(W杯)開催から四年。数百億円の巨費を投じて改修・新設された全国十カ所の大規模スタジアムの経営が、関係自治体の重荷になりつつある。建設費の返済に加え、年間数億円の維持管理費が財政を圧迫。頼みの地元Jリーグの観客も頭打ちで、「過剰設備」の批判も浴びる。自治体側は、運営を民間に委ねるなど、効率重視の経営を模索している。(東京支社 小川康介)
広島市長表明
広島市の秋葉忠利市長は十八日の記者会見で、東広島駅貨物ヤード跡地(南区)への新球場建設に伴う現球場(中区)の跡地利用について、「広範な意見を聞いて決めたい」と民意を重視する意向を強調した。意見聴取の具体的方法や、本格的な検討開始時期は「関連予算が通ったばかり」として明言しなかった。
一方、利用計画策定にあたっては、「夢」だけではなく実現可能性も大きな要素になると指摘。「現球場跡地は公園で、用途が制限されることや建ぺい率の問題、財政面の制約を十分考える必要がある」とした。
市は、跡地に年間百五十万人の集客機能を持たせる方針で、地元や各界、市民の要望を踏まえて、本年度中に方向性をまとめる。球場の改修・転用や、施設を解体した後での新施設建設、更地化など、現時点ではあらゆるケースを想定し、白紙から検討する。
「私の再生計画」232人思い熱く
サッカーJリーグ2部(J2)に降格したサンフレッチェ広島が、一次キャンプに入った。「一年でJ1に戻る」。この唯一の目標を果たすための「私の再生計画」が、電子メールとファクスで二百三十二人から寄せられた。ほとんどが、観客を増やしてムードを盛り上げ、後押しをしようとのアイデア。サービスや情報発信などのソフト、スタジアムやアクセスの問題と併せ、サンフレへの熱いメッセージを送る。
広島ビッグアーチ(広島市安佐南区)で二十日にB’z、八月十七日にはSMAPが公演する。一九九三年の完成以来、コンサートは初めて。芝を傷めないよう、「すのこ」のようなパネル約八千枚を主催者が準備して実現した。
パネルは樹脂製で、光を通す穴が開いている。一平方メートルの一枚ずつをねじでつなげる。欧州のスタジアムでイベントをする際は一般的な方法。
ビッグアーチを含む広島広域公園のスポーツ施設では、一九九七年に第一競技場でミスターチルドレンのコンサートをした。しかし、踏み荒らされた芝の復旧は予想以上に手間取り以後、以後公園内でコンサートはなかった。
パネルは一枚一万円ほど。ビッグアーチのフィールドは八千平方メートル近くあり、購入する余裕はない。今回はいずれもビッグネームのアーティストで、「パネル持参」で全国のスタジアムを巡演することから、条件が折り合った。
二組とも中四国や九州も含め、約四万二千人が訪れる予定。設営から撤収まで計三千四百万円程度の使用料が見込める。昨年度のビッグアーチだけの収入約三千九百万円の九割近くに相当し、施設側も歓迎している。
維持費ズシリ 年3億円弱(1)
イベント収入は小額
W杯決勝トーナメント・日本―トルコ戦が行われた十八日のJR利府駅。増発された東北線から降り立った「ジャパン・ブルー」の一団は、降りしきる雨の中、係員に誘導され、次々とバスに乗り込んだ。W杯グループリーグで初めて挙げた勝ち点と勝利。さらに未知の領域である決勝トーナメントに臨む「トルシエ・ジャパン」と一体感を強める日本代表サポーターの興奮は試合前、いやがおうにも高まった。それでも四万五千人超の観客は、大きな混乱もなく、整然と宮城スタジアムに吸い込まれていった。
スムーズな観客誘導の決め手はシャトルバスを使った輸送計画だった。その数四百五十台。県W杯推進局は福島、山形、岩手県からもバスを集めた。JRの利府、国府多賀城、多賀城に仙台市営地下鉄泉中央を加えた計四駅などからのシャトルバス輸送にかかった費用は合わせて約一億円に上る。
「W杯だからこそ可能になった」
県W杯推進局担当者がこう語る輸送計画は反面、宮城スタジアムの交通アクセスの悪さも物語る。
そもそも宮城スタジアム建設計画が持ち上がったのは一九八七年。昨年行われた国体の誘致がきっかけだった。
利府町への建設について、当時の事情を知る県庁OBは「県住宅供給公社の分譲地が売れ残った。余った土地を活用しなければならないということで決まった」と振り返る。「当初からあった『不便な場所』という意見」(県庁関係者)は「有効活用」に押し切られた格好だ。
その後の九二年七月、県議会はW杯誘致を決議。宮城スタジアム建設計画は〈1〉観客席の三分の二を屋根付きとする〈2〉座席は背もたれ付きとする〈3〉貴賓席を作る――など、W杯仕様に変更された。結果、当初見込みの建設費は百八十五億円から二百七十億円に膨らんだ。この建設費増は「県議会にもW杯待望論もあり、引き返すことが出来ない雰囲気」(県庁OB)に気おされ、容認された。
ただ、仙台藩祖・伊達政宗の兜(かぶと)を形取ったW杯宮城の象徴・宮城スタジアムは、今後、窮迫する県財政の代名詞にもなりかねない。
県教委スポーツ健康課によると宮城スタジアムの年間維持費用は約二億八千万円(昨年度実績)。これに対して主な収入となる使用料の実績は、オープン一年目の二〇〇〇年度が、サッカーのキリンカップ、Jリーグオールスターなどで約二千四百万円。二年目の昨年度は、使用料を徴収しない国体の夏季、秋季大会とプレ大会や全国障害者スポーツ大会しか行われなかったためほぼゼロだった。「公共施設ということもあり、黒字ベースということは、最初から考えられない」(県スポーツ健康課)という巨大スタジアムは、年間億単位の「赤字」を生み出す。これを穴埋めするのは税金だ。
今年度、宮城スタジアムで見込まれている収入は、W杯を除くと、ベガルタ仙台の二試合とSMAPの屋外コンサートで計約三千万円。年間維持費のわずか十分の一にすぎない。
華やかな「宴(うたげ)」が終わり、県民の目の前には、こうした現実が突き付けられる。