[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
新球場建設に伴う広島市民球場(中区)の跡地をめぐり、市の利用計画案づくりが大詰めを迎えた。広島商工会議所ビルの移転検討を盛り込んだ商議所からの提案も踏まえ、選定済みの民間二案を軸に年内にも計画案をまとめる方針。都心再生の成否を握るビジョンづくりの行方をみた。(城戸収)
■案修正 独自性に揺らぎも
「大きな節目と受け止めている」。十二日、広島商工会議所の大田哲哉会頭から提案書を受け取った秋葉忠利市長は笑顔で握手を交わした。大田会頭も「官民で再開発する全国のモデルケースに」と連携を強調した。
提案は「にぎわい」「緑地」の二つのゾーンを設定。にぎわいゾーンに商議所ビルを移し、ミュージカルシアターなどを整備する内容である。
一方で、市選考委が昨年八月に優秀案に決めた「折り鶴展示施設」と「水族園」をメーンとする民間二案と統合できるよう、柔軟性を持たせた中身にしたという。
▽集客力に疑問符
市は、跡地活用の集客目標を年間百五十万人と想定する。しかし、民間二案の「集客力」には当初、経済界や地元商店街から疑問や不満が噴出した。
ぎくしゃくしていた市と商議所との関係はしかし、「秋葉市長の信頼が厚い」とされる大田氏の昨年十一月の会頭就任で風向きが変わる。
大田会頭は跡地活用の自由度を高め、原爆ドーム周辺の景観問題に貢献できる商議所ビル移転に前向きな姿勢を示したのだ。経済界の不満を無視できない市も、計画策定の期間を九カ月延長。事務レベルで双方が協議を重ねた末の商議所案は、それぞれの軌道修正の「結論」といえる。
市は今後、民間二案と商議所案を基に、跡地にどんな機能を盛り込むかを整理し、市としての基本方針を策定する。九月にはたたき台を公表し、市民意見を募集する意向。その後、現時点では商議所ビルの移転が反映されていない二案の民間事業体に対し、修正に向けた検討を依頼する。
課題も多い。民間二案を提案した事業体の協力が、どこまで得られるか不透明な点だ。集客力強化を求める商議所案の要素を重点的に取り込めば、二案の計画自体が揺らぐ可能性もある。提案した事業体に名を連ねる企業の担当者は「もし劇場を整備するなら、うちが受け持つのは難しい」と不安を漏らす。
▽国会議員も提案
さらに今年六月、地元選出を含む超党派の国会議員たちが球場跡地を候補の一つとする「国際平和機関の誘致構想」を掲げた。唐突感が否めないとする市は「正式に話を受けていない」と静観の構えだが、どのくらい現実味を帯びるのかも焦点となりそうだ。
市民の合意を得つつ、来年三月を予定する新球場完成の一年以内に事業着手する―。都心の将来を担うビジョンを始動させるまでの道のりは、まだ容易とはいえない。
《市民球場の跡地利用》 大半が国有地である跡地(約3・3ヘクタール)について、広島市は都市公園としての利用計画を策定する方針。民設民営とし、年間150万人以上の集客目標を掲げた公募で、折り鶴の保存・展示施設やカフェなどを備えた「平和祈念堂」(事業費約18億5000万円)▽ビオトープ型水族園、広場などからなる「水な都(みなと) Mother‘s Stage」(約12億5000万円)の2案を優秀案に選んでいる。この2案を軸に広島商工会議所の提案を踏まえて計画案をまとめ、国と協議して決定する。